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第3回 チタンラジエターガード


■WRでのレース参戦を開始
  ラジエターの破損が問題になった

 レアルエキップが開発するカスタマイズパーツには大きく2種類がある。ひとつはマシンのパフォーマンスをさらに引き出すためのパーツ、もうひとつはプロテクション効果を高めるためのパーツだ。
  より速く走るためにはなにかしらのリスクを負わなければならない。それは転倒というリスクだ。もちろんハイスピードでの転倒は絶対に避けなければならないものだが、エンデューロの場合にはウッズやガレ場など、比較的ゆっくりしたスピードでの転倒が多い。低速での転倒の場合、ライダーはほとんどダメージを受けることが少なく、多くの場合すぐに再スタートすることが可能だが、マシンがダメージを受けてしまうとスタートが不可能になってしまう。また転倒に至らなくても木や岩にマシンをヒットして、マシンを壊してしまうケースがある。これらを防ぐためのパーツがプロテクションパーツなのだ。
  レアルエキップがWR250Fの発売と同時に内山裕太郎を筆頭にエンデューロレースシーンに参入するようになってまもなく、実戦の場で問題になったのがラジエターの破損だった。WR250Fのラジエターと、そのマウント方法に問題があるわけではない。限られたスペースで最大限の冷却効果を発揮し、さらに、スリムなポジションをスポイルしないため、ラジエターに直接左右のシュラウド(空気導入板兼タンクカバー)をマウントしている。そのため、転倒してラジエターシュラウドを強く押されたりした場合に、比較的容易にラジエターが変形してしまう。
  ラジエターガードの開発は容易ではなかった。
  まず、どこまでを守るのか? ラジエターコアの四角の形を維持すればよいのか、前後へ曲がってしまうことも防がなければならないのか。弱ければガードにならないし、あまり強固に守れば、ラジエター以外の部分に悪影響が出てしまう。

■現場から導き出したコンセプト

 毎回エンデューロレース会場で見かけるすべての水冷マシンのラジエターをサンプリングしたところ、ラジエターの損傷には大きく三つのグループがあることがわかった。ひとつは真横からの衝撃によるラジエターコアの四角い部分の一辺が真ん中から凹んでしまうパターン。そしてもうひとつは走行中の転倒により四角が並行四辺形に変形してしまうパターン。そしてラジエター取り付け部分から後ろ方向へ取り付けステー部分が変形してしまうパターンだった。
  これらのサンプリングとライダーからの意見を聞きレアルエキップによるラジエターガードのコンセプトが決定した。「レースを走れればよい。ラジエターをヒットしてもレースを中断せず走り続けることができるように必要にして十分なプロテクションを」。つまり多少の変形は容認し、しかし致命的なダメージ、つまり冷却水が漏れて走れなくなってしまうことを極力避ける構造とした。
  同時に、すべてのレアルエキップのパーツに流れる開発コンセプト「できる限り軽く」を目標にした。マシンの軽量化はそのままパフォーマンスの向上につながる。もちろんパーツを追加するのだから軽量化とはいえないが、重量増を最小限に抑えたかった。
  そしてコンセプトに基づいた開発が始まった。数多くの実戦経験から、強度を確保するためにはコア部分の四角の形状を維持できるようサポートしてやればよいことがわかってきた。しかし、「レーサー」という極限まで詰められた設計の中には、新たなパーツが入り込む隙は見つからなかった。ある程度の強度を確保しようとするとそれなりの大きさが必要になってくる。同時に重量増はできる限り避けたい。設計はスペースと重量とは戦いとなった。アルミ素材であれば重量増は最小限に抑えられるが強度を確保するためには大きなスペースが必要。鉄であれば強度はある程度確保できるが重量が増してしまう。
  そんな中、日ごろより弊社パーツの主にレーザーカットをお願いしているレーザー加工業者の下田社長(余談だが、この方もセローの使い手でセローのイベントで知り合っていろいろ無理をお願いしている関係だ)が「チタンはどうだい」と勧めてくれた。


チタンは硬度が高いために切削加工には高い技術力が必要になる。

■チタンという答え

  チタンそのものとアルミニウムの質量を比較すると、約60%ほどチタンのほうが質量が大きいのだが、強度を比較するとチタンはアルミニウムの約2倍。鋼鉄とほぼ同等の強度を持ち、超硬合金として利用されることが多い。比重のわりに強度が高く、そのためチタン合金は実用金属の中では、最大クラスの強度を持つものだ。軽く、そして少ない肉厚で強い強度を持つこのチタン合金は、ただし材料としては高価な
もので、そのためモーターサイクルのパーツとしてもおいそれとあちこちに使われることはない。加えて、その固さ故に加工が非常に難しいのだが、これは下田社長が解決してくれることとなった。
  テストは好調だった。ただし「転倒」のテストをしなければならず、しかも同じ転倒を再現するということはほぼ不可能なので実戦で鍛えるしかなかった。しかしそこはレアルエキップ。代表の河合をはじめ、契約ライダー内山裕太郎、また身近に多くのお願いできるお客様がいたこともよかった。また、それらのライダーがいわゆる「げろ」と呼ばれるハードアタック系のライディングを好み、多くの転倒実験? をしてくれたのもラッキーだったのかもしれない。これによって多くのサンプル例をとることにより実戦経験の実証によりパーツは完成したのである。しかし開発から販売まで1年以上を要したのも事実である。

車体の比較的上部に位置するパーツ。重量増が操縦性に悪影響をおよぼさないように軽量な素材を選んだ結果がチタン合金だ。


■プロテクション効果を実証した6日間

  昨年11月のISDE(インターナショナルシックスデイズエンデューロ)に、初の日本代表チームの一員として参加した内山裕太郎が、ウッズが多いというニュージーランドのコースに備え、チタンラジエターガードを装着した。マシンはアルミフレームを採用し、発売されたばかりの'07モデル。'06モデルまでとは当然大きく設計が異なっており、'06用ガードの流用は不可能。レアルエキップでは、プロトタイプとして開発中のものを、ニュージーランド大会に間に合わせるように仕上げた。 雨が続いて難しいコンディションになったニュージーランド大会。狭いトレールはマディとなり、さらに大きなギャップで荒れ放題に荒れた。裕太郎は、ちょっとしたミスでコース外に弾き飛ばされ、マシンは、よりによってラジエターから木に衝突してしまった。さすがにラジエターは大きく変形してしまい、一瞬「やってしまった…」と思ったようだ。だが、幸いにもラジエターは変形はしていたものの、亀裂を生じることもなく、本来の機能を保っていた。ラジエターガードも変形してしまったが、もし、このガードがなければ、ラジエターはひどくつぶれ、その後100kmを走ってフィニシュにたどりつくことはできなかっただろう。裕太郎が最後のピットにたどりつくと、そこには新しいラジエターが用意されていた。翌朝もまたスタートすることができた。彼が6日間を走りきって、日本初のチームの好成績に貢献したことは言うまでもない。

レアルエキップスペシャルのエンデューロ仕様にはチタンラジエタガードももちろん標準装備されている。


■カスタマイズの基本を大切に

レアルエキップの考えるカスタマイズの本来の姿は、取り付けることによって、どこかが良くなっても、なにかが犠牲になってしまうものではいけないということ。その基本的な考え方を踏襲するならば、4ストロークマシンとして最大限の軽さが武器ともいえるWR250Fのためのラジエターガードは、軽さと強さを両立したチタン合金でなければならなかったというのは、ある意味では当然だったのである。そのため、やや高価なパーツとなってしまっているが、多くのユーザーにご理解をいただき、やはりチタンを選んで良かったと考えている。'01モデルから、最新の'07モデルまで、車体の基本設計が変更されるたびに、このチタンラジエターガードもモデルチェンジしているが、それは、もともとWR250Fに設計上のスキがほとんどないということでもあり、ラジエターガードも最小限のスペースでフィットするように設計されているからでもある。チタン素材が持つ酸化チタン皮膜(非常に優れた耐腐食性を持つ)特有の薄褐色の色合いもあって、装着していてもほとんど目立つことがないが、しかしプロテクション効果は高い。またチタンラジエターガードは、同じレアルエキップ製のサーモスイッチ付クーリングファンを併用できるように設計されているが、このあたりのことは、またの機会に譲りたい。


モデル毎の専用設計で完全なフィットを実現している。


レアルエキップ製のクーリングファンを併用できるという点にもこだわった。

   
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